苛まれるとは?苛まれるの意味
強い苦痛や精神的苦悩を受け続けること、激しく責め立てられるような状態に置かれることを意味する言葉です。
苛まれるの説明
「苛まれる」は「苛む」の未然形に受身の助動詞「れる」がついた形で、自分ではどうにもならないほどの強い苦しみや悩みに継続的につきまとわれる状態を表します。例えば「後悔の念に苛まれる」や「悪夢に苛まれる」のように、抽象的な概念や感情によって精神的に追い詰められる状況で使われることが多いです。類語の「苦しめられる」よりも程度が激しく、「悩まされる」よりも深刻なニュアンスを持ちます。英語では「torment」や「be tormented by」が相当する表現として用いられます。
心の奥底でじわじわと続く苦しみを表現するのにぴったりの言葉ですね。
苛まれるの由来・語源
「苛まれる」の語源は、動詞「苛む(さいなむ)」に由来します。「苛む」は「苛(か)」という漢字から成り、この「苛」には「厳しい」「激しい」「残酷な」といった意味があります。古代中国では「苛政は虎よりも猛し」という言葉があるように、過酷な支配を意味する言葉として使われていました。日本では平安時代頃から「心を苦しめる」「責め立てる」という意味で使われるようになり、受身形の「苛まれる」として定着しました。もともと政治的・社会的な厳しさを表す言葉が、次第に個人の内面的な苦悩を表現するようになった歴史的な背景があります。
心の深い部分で続く苦しみを表現する、日本語ならではの豊かな表現ですね。
苛まれるの豆知識
「苛まれる」と似た言葉に「悩まされる」がありますが、両者には明確なニュアンスの違いがあります。「悩まされる」が比較的軽い煩わしさや困りごとを表すのに対し、「苛まれる」はもっと深刻で、逃れられないような強い苦痛を伴う場合に使われます。また、「苛まれる」は主に過去の出来事や自責の念など、時間的継続性のある苦しみに使われる傾向があります。面白いことに、この言葉は文学作品では主人公の内面描写によく用いられ、夏目漱石や太宰治の作品にも頻繁に登場します。
苛まれるのエピソード・逸話
作家の太宰治は「人間失格」の中で、主人公が罪悪感に苛まれる様子を「私は罪悪感に苛まれ、夜も眠れないほどだった」と描写しています。これは太宰自身の実体験が反映されているとも言われ、アルコール依存症に苦しんだ彼の内面の葛藤を表現したものと考えられます。また、プロ野球の松井秀喜選手は現役時代、スランプに陥った時に「自分自身に苛まれる日々が続いた」と語り、プレッシャーと戦うアスリートの心理状態をこの言葉で表現しています。芸術家の岡本太郎も、創作に行き詰まった時には「自分自身の未熟さに苛まれる」と述べ、創造的苦悩をこの言葉で表していました。
苛まれるの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「苛まれる」は日本語の受動表現の特徴をよく表しています。日本語の受身形は、単に「〜される」という動作の受け身だけでなく、迷惑受身(被害受身)としての用法が発達していることが特徴です。「苛まれる」はまさにこの迷惑受身の典型で、話し手が望まない苦痛を被っている状態を表現します。また、この言葉は自動詞的な性質も持っており、外部からの明確な動作主が特定できない場合にも使用されます。例えば「後悔に苛まれる」の場合、後悔そのものが動作主として擬人化されている点は、日本語の擬人法の面白い例と言えるでしょう。心理動詞としての分類も可能で、感情や心理状態の変化を表す貴重な言語資料となっています。
苛まれるの例文
- 1 深夜になると、今日も無駄な時間を過ごしてしまったという後悔の念に苛まれる
- 2 SNSで他人の成功話ばかり見ていると、自分は遅れをとっているという焦りに苛まれてしまう
- 3 あの時あんなこと言わなければよかったと、過去の失敗談に何度も苛まれる
- 4 締切が近づくにつれ、ちゃんと仕上がるだろうかという不安に苛まれて夜も眠れない
- 5 子育て中は、これで本当に子どものためになっているのかという自問自答にいつも苛まれている
「苛まれる」の適切な使い分けと注意点
「苛まれる」は強い精神的苦痛を表現する言葉ですが、使い方にはいくつかの注意点があります。適切な文脈で使うことで、より正確なニュアンスを伝えることができます。
- 物理的な苦痛には基本的に使用しない(「頭痛に苛まれる」は不自然)
- 一時的な悩みより、継続的な苦しみに使う
- 深刻度が高い場面に限定する(軽い悩みには「悩まされる」が適切)
- 受身形なので、苦しみの原因を「に」で示す
| 状況 | 適切な表現 | 不適切な表現 |
|---|---|---|
| 罪悪感を感じ続ける | 罪悪感に苛まれる | 罪悪感に悩まされる |
| 軽いストレス | 仕事に悩まされる | 仕事に苛まれる |
| 物理的な痛み | 腰痛に苦しむ | 腰痛に苛まれる |
文学作品における「苛まれる」の使用例
「苛まれる」という表現は、日本の文学作品において登場人物の深い心理描写によく用いられてきました。著名な作家たちがこの言葉を使うことで、複雑な人間の内面を表現しています。
私は絶えず過去の過ちに苛まれ、夜も眠れぬほどであった。
— 夏目漱石『こころ』
良心の呵責に苛まれるとは、正にこのことかと悟った。
— 太宰治『人間失格』
これらの引用からわかるように、「苛まれる」は自己嫌悪や後悔、罪悪感といった深い心理的苦悩を表現する際に特に効果的に使われています。文学におけるこの言葉の使用は、日本語の感情表現の豊かさを示す良い例と言えるでしょう。
心理学的観点から見る「苛まれる」状態
「苛まれる」という心理状態は、現代の心理学においても重要なテーマです。この状態が長期間続く場合、メンタルヘルスへの影響が懸念されます。
- 反芻思考(ルミネーション)の一種と考えられる
- 完璧主義の傾向が強い人ほど陥りやすい
- 過去のトラウマや失敗体験が引き金になることが多い
- 適切な対処法を見つけないと、うつ状態に発展する可能性がある
心理カウンセリングでは、「苛まれる」状態から抜け出すための方法として、認知行動療法やマインドフルネスが効果的とされています。自分を責め続ける思考パターンから離れ、客観的な視点を持つことが重要です。
よくある質問(FAQ)
「苛まれる」と「悩まされる」の違いは何ですか?
「悩まされる」が比較的軽い煩わしさや困りごとを表すのに対し、「苛まれる」はもっと深刻で、逃れられないような強い苦痛を伴う場合に使われます。例えば「蚊に悩まされる」は自然ですが、「蚊に苛まれる」は不自然に聞こえます。
「苛まれる」は日常会話でよく使いますか?
比較的フォーマルな表現で、日常会話よりは文学作品や深刻な心情を表現する場面で使われることが多いです。ただし、ビジネスシーンや真剣な相談事などでは自然に使われる表現です。
「苛まれる」の対象になるものにはどんなものがありますか?
主に抽象的な概念が対象になります。例えば「罪悪感」「後悔」「不安」「自責の念」「過去の記憶」「悪夢」など、心理的な苦痛をもたらすものが典型的です。
英語で「苛まれる」はどう表現しますか?
「be tormented by」や「be plagued by」が近い表現です。例えば「I am tormented by guilt」(罪悪感に苛まれている)のように使います。
「苛まれる」をポジティブな意味で使うことはできますか?
基本的にはネガティブな意味合いの強い言葉ですが、「愛情に苛まれる」のように、強い感情に押し流されるようなポジティブな文脈で使われることも稀にあります。