押しも押されぬとは?押しも押されぬの意味
実力があり堂々としていて、誰にも圧倒されない様子を表す慣用句
押しも押されぬの説明
本来の正しい表現は「押しも押されもせぬ」です。「自分から押すこともなく、他人から押されることもない」という意味から転じて、確固たる実力や地位を持つことを表現します。文法的には「押しも押されぬ」は誤りで、並列を表す助詞「も」が片方にしか使われていないため、正しい日本語とは言えません。この誤用が広まった背景には、「押すに押されぬ」という別の表現との混同があると考えられています。文化庁の調査では、実に成人の半数以上が誤用していることが明らかになっており、現在では国語辞書にも「誤用」として記載されるほど一般的な間違いとなっています。
言葉の変化は面白いですね。誤用が広まることで、逆に正しい表現を学ぶきっかけにもなります。
押しも押されぬの由来・語源
「押しも押されぬ」の由来は、元々は「押しも押されもせぬ」という正しい形から来ています。この表現は、室町時代から江戸時代にかけて使われ始めたとされ、「自分から進んで押すこともなければ、他人から押されることもない」という意味合いから、どっしりと構えて動じない様子を表すようになりました。時代とともに言語が簡略化される過程で、「もせぬ」の部分が省略され、現在の誤った形が広まったと考えられています。
言葉は生き物ですね。誤用が広まると、いつの間にかそれが標準になってしまうこともあります。
押しも押されぬの豆知識
面白い豆知識として、文化庁の「国語に関する世論調査」では、正しい「押しも押されもせぬ」を使う人はわずか17.5%しかおらず、誤った「押しも押されぬ」を使う人が56.0%もいることが判明しました。また、この表現はテレビや雑誌などのメディアで頻繁に誤用されており、著名人やアナウンサーでさえ間違えることがあるほどです。正しい表現を知っていると、日本語通として一目置かれるかもしれませんね。
押しも押されぬのエピソード・逸話
人気俳優の香川照之さんがテレビ番組で「押しも押されぬ」という表現を使った際、視聴者から「実は誤用ですよ」という指摘が殺到したことがあります。香川さんは後日、自身のラジオ番組で「恥をかいた。正しくは『押しも押されもせぬ』なんですね。勉強になりました」と謙虚に謝罪し、正しい日本語の重要性を語りました。このエピソードは、言葉のプロフェッショナルでも間違えることがあるという良い例となっています。
押しも押されぬの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「押しも押されぬ」は「係り結び」の破綻という観点から分析できます。並列を表す助詞「も」は通常、対になる要素に付くため、「押しも」に対応する「押されも」が必要です。しかし「押されぬ」では「も」が欠落し、文法的不均衡が生じています。これは言語の経済性原理(話し手の努力節減)による省略現象の一例で、類似した現象は「取るに足らない」が「取るに足りない」となるなど、日本語の歴史的に頻繁に見られます。
押しも押されぬの例文
- 1 あの店は行列が絶えない押しも押されぬ人気店で、週末ともなると開店前から長蛇の列ができている
- 2 彼はこの業界では押しも押されぬ第一人者で、その名前を知らない人はまずいないだろう
- 3 このスマホは発売から数年経っても押しも押されぬベストセラーで、みんなが認める名機となった
- 4 あの教授は学界では押しも押されぬ権威で、その論文は必ず参考文献に挙げられるほどだ
- 5 この漫画は少年ジャンプの押しも押されぬ看板作品で、連載10年を超えても人気が衰えることを知らない
使い分けのポイント
「押しも押されぬ」は、主に確固たる地位や評価が定着しているものに対して使われます。似た表現との使い分けが重要です。
- 「不動の」:より格式ばった表現で、ビジネス文書や公式の場面で好まれる
- 「揺るぎない」:信念や決意など内面的な強さを強調する場合に適する
- 「申し分ない」:欠点がなく完璧であることを表すが、地位の確固さとはニュアンスが異なる
カジュアルな会話では「超有名」「最強」などの若者言葉が使われることも多いですが、改まった場では「押しも押されぬ」が適切です。
歴史的背景と変遷
この表現の歴史は古く、江戸時代の文献にも類似の表現が見られます。当初は「押しも押されもせぬ」が正形でしたが、言語の簡略化が進むにつれて変化してきました。
言葉は生き物である。誤用が広まれば、いずれそれは標準となる。
— 言語学者 金田一京助
戦後の国語教育の変化やマスメディアの発展が、この表現の普及に大きな影響を与えました。特にテレビのバラエティ番組やニュースで頻繁に使われたことで、誤用が全国に広まったと考えられています。
関連用語と表現
「押しも押されぬ」と関連する他の慣用句や表現を理解することで、日本語の豊かさをより深く味わうことができます。
- 「押すに押されぬ」:避けられない状況や、どうしても〜せざるを得ないという意味
- 「動かぬ証拠」:疑いようのない確かな証拠
- 「揺るぎない地位」:しっかりと確立された立場
- 「盤石の体制」:非常に強固で安定した組織や体制
これらの表現は、すべて何かが確固としている状態を表す点で共通していますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
よくある質問(FAQ)
「押しも押されぬ」と「押しも押されもせぬ」、どちらが正しいですか?
文法的には「押しも押されもせぬ」が正しい表現です。並列の助詞「も」が両方に必要なため、「押されぬ」ではなく「押されもせぬ」が正しい形となります。ただし、「押しも押されぬ」も広く使われており、現在ではほぼ定着した表現と言えます。
なぜ「押しも押されぬ」という誤用が広まったのですか?
「押すに押されぬ」という別の慣用句との混同や、言語の簡略化の傾向が主な原因です。また、メディアや著名人による使用が誤用を広める一因となり、現在では正しい形よりも誤った形の方が一般的に使われるようになりました。
ビジネスシーンで使っても問題ありませんか?
問題ありません。むしろ、確固たる地位や実力を表現する際に効果的です。例えば「当社は業界で押しも押されぬトップ企業です」といった使い方ができます。ただし、言葉に敏感な方には正しい表現を説明できるとより良いでしょう。
類語や言い換え表現はありますか?
「揺るぎない」「不動の」「確固たる」「申し分ない」などが類語として挙げられます。また、「誰もが認める」「文句のつけようがない」といった表現も似たニュアンスで使うことができます。
若者でもこの表現を使いますか?
比較的年配の方が使う印象がありますが、SNSやメディアの影響で若者にも認知されています。ただし、日常会話では「超有名」「誰でも知ってる」「最強」などのカジュアルな表現が好まれる傾向があります。